破毀院の役割


Présentation de la Cour de cassationAbout the court - 最高法院的职能 - محكمة النقض الفرنسية - РОЛЬ КАССАЦИОННОГО СУДА - Tribunal de casacion Francés


破毀院の役割
 
 破毀院は、フランスの司法系統における最上級審の裁判所である。民事、商事、労働及び刑事に係る各訴訟は、まず、第一審裁判所(小審裁判所、大審裁判所、商事裁判所、労働裁判所等)において審理される。これらの裁判所の判決は、訴訟の重要性に応じて、軽微な事件については事実審の終審判決として言い渡されるが、大半の事件については、第一審判決として言い渡され、これに対して控訴院に上訴することができる。控訴院は、事実及び法律上の問題に関して、すべての点について新たに審理する。第一審裁判所が事実審の終審判決として言い渡した判決及び控訴院が言い渡した判決については、いずれも破毀院に上告することができる。破毀院は、司法系統の裁判所の頂点に位置することに加え、下級裁判所にはない次の二つの特徴を備えている。
 第一に、破毀院は、唯一無二の存在であることである。「フランス共和国全土において、破毀院は、一つしか存在しない」との基本原則が、司法組織法典において破毀院に関する規定の冒頭に明記されているのも、この原則が最も重要であるからである。破毀院の唯一無二性は、判例に統一性を持たせ、フランス全土における法解釈の同一性を保障するという破毀院の本質的な目的と不可分である。破毀院が唯一の存在であることによって、法解釈の統一性が保たれ、その結果、規範となる判例の作成が可能となる。この唯一性と統一性は、相互補完的な条件である。
 第二に、破毀院は、第一審裁判所及び控訴院が判決を言い渡した後の第三審裁判所ではないことである。破毀院は、本質的に、本案について判断するのではなく、原判決において専権的に認定された事実に対して法令が正しく適用されているかどうかを判断することを求められている。こうした理由から、厳密に言えば、破毀院は、上告申立ての対象となっている原判決が裁判した争訟についてではなく、原判決それ自体について判断するのである。破毀院は、実のところ、裁判官が言い渡した判決についての裁判官であり、事実審の裁判官が自ら認定した事実並びに提起を受けた事件及び論点について法令を正しく適用したか否かを判断する任務を負っているわけである。すべての上告は原判決の破棄を求めることを目的とするが、このように、破毀院は、これらの原判決において法令が正しく適用されているかどうか、あるいは適用に不備・誤りがあったかどうかについて判断する。
 
 破棄された原判決は取り消され、そして、破棄が差戻しを伴わない例外的な場合を除き、当該事件は破棄の範囲内で審理がやり直される。それゆえ、争訟の帰趨は、おのずとこの段階、すなわち破毀院における判断とかかわることになる。
 
破毀院は、これらの特徴を備えることにより独自性を有し、破毀院に申し立てられる上告は「特別」な上告と称される。このような特徴は、その歴史に由来し、フランス革命の出来事をその起源とする。すなわち、1790年11月27日法により、「破毀裁判所」(Tribunal de cassation)が創設され、それが共和暦12年フロレアル(花月、共和暦8月)28日の元老院決議(sénatus-consulte)によって破毀院(Cour de cassation)となったのである。
しかし、破毀院の歴史は、実際には更に時代を遡り、アンシアン・レジームの時代に司法権が行使されていた様式をその起源とする。当時、司法権は淵源として国王に由来していたことから、高等法院(Parlements)の決定に対して破棄を求めることが可能であり、破棄の求めの審理は国王顧問会議(Conseil du roi)が行っていた。フランス革命がもたらした主な産物として、この当初の存立基盤を失った国王顧問会議が政体の変化に即して破毀院として再構成され、国家元首に属していた権限が裁判官に移された。そして、19世紀になってその権威が確立され、それが完全に認知されるように至ったのである。
 
 このように破毀院が法的な権威のみならず、道徳的な権威をも有していることから、立法者は、破毀院に対し、様々な形態による裁判外の任務を付与している。その一例として、意見照会手続の導入が挙げられる。この手続により、破毀院は、一定の条件下において、事後ではなく事前に、すなわち事実審裁判官が判決を言い渡す前に、法解釈を統一する任務を遂行することができる。そして、破毀院が果たす役割も、次のように間接的に増大している。すなわち、その全部又は一部のメンバーが破毀院の司法官によって構成される裁判機関的性格を有する様々な機関が創設されており、また、その影響力や重要性が増している各種機関において、破毀院の司法官が裁判事務以外の役職に就くことがより多く見られるようになっている。

破毀院の組織
 
 破毀院の組織体制は、当然、法律審としての任務を負う裁判所の機能に適したものとなっている。とはいえ、破毀院が十全に機能するためには、強固な司法行政上の組織が存在することが必要である。
 
 裁判所としての破毀院は、複数の部によって構成されており、破毀院幹部会の定める改訂可能な基準に従って、各部に対して審理すべき上告事件が振り分けられる(事件の配点)。当初三つ(民事部、刑事部及び審理部(1947年に廃止))あった部は徐々に増え、現在6か部が置かれている。厳密な意味での民事3か部(民事第一部、民事第二部、民事第三部)に加え、商事・経済・財政部、社会(労働)部及び刑事部がある。各部には部長判事が配される。破毀院長は、それぞれの部が取り扱う上告事件の重大性いかんを考慮して、それに見合った数の判事を各部に配属する。したがって、各部に配属される判事の数は必ずしも同数とはならない。さらに、各部において、審理すべき上告事件の数に応じて、係が設けられる。各部内では、このように係に分かれおり、各係内の裁判体自体も一定していない。上告申立てが受理の要件を満たさず又は根拠が薄弱であり、「上告却下」と判断される場合及び上告申立てに対する結論が明らかである場合には、3名の裁判官によって判決が言い渡される。その他の場合には、5名以上の議決権を有する裁判官によって構成される合議体によって判決を言い渡さなければならない。各部は、例えば事件の判決が過去の判例を変更する可能性がある場合や、機微な論点について判断を示す必要がある場合などには、部長判事の決定により、大合議体(Formation plénière)で審理を行うことができる。
 
 破毀院においては、このほかに、常設ではないが、各部の裁判官によって構成される裁判体(大法廷Assemblées plénières)、及び三つ以上の部の裁判官から構成される裁判体(混合部Chambres mixtes)を編成することがある。これらの裁判体の裁判長は、破毀院長又は最古参の部長判事が務める。
 
 大法廷は、破毀院長、各部の部長判事及び最古参判事並びに各部から選ばれた1名の判事によって構成され、総数は19名となる。事件を大法廷に回付するか否かの決定は、破毀院長又は当該事件の係属する部が行う。一般原則にかかわる問題を提起する事件は、大法廷で取り扱うことができる。一度判決が破棄された後に差戻審の判決に対して同じ理由で破棄が申し立てられたときは、大法廷で当該事件を取り扱わなければならない。検事総長が弁論開始前に大法廷に回付するよう請求したときも、当然に大法廷で取り扱うこととなる。大法廷が言い渡した破棄判決は、差戻審の裁判所が大法廷のした法律問題についての決定に従わなければならないという重要な特殊性を有する。
 
 混合部は、破毀院長又はその代理者である判事のほか、混合部を構成する各部から4名の裁判官(部長、最古参の判事及びその他の判事2名)によって構成される。例えば、三つの部の裁判官から構成される混合部の総数は13名となる。複数の部の所掌事務にかかわる問題を提起する事件、及び複数の部の間で問題について異なる判断がされ又はされる可能性のある事件は、混合部に回付しなければならない。また、最初に上告事件を審理した部の評決において裁判官の意見が可否同数となったときも、混合部に回付しなければならない。さらに、検事総長が弁論開始前に混合部に回付するよう請求したときも、当然に混合部に回付されることとなる。この混合部という裁判体は、主に、各部間に生じ得る判例の不一致を解消するために有用である。
 
 各部には、一名又は数名の書記が配属される。
 
また、破毀院は、裁判機関的性質を有するいくつかの委員会に対し、その運営や活動において必要となる司法官、事務設備及び執務場所を提供している。こうした理由から、これらの委員会は破毀院と密接な関係に置かれている。その例として以下の委員会が挙げられる。
 
 勾留補償中央委員会:免訴決定又は無罪判決によって終局した一連の刑事手続においてなされた未決勾留による損害の補償について、控訴院長がした決定に対する上訴審として機能する。
 
 刑事再審委員会:再審請求を審査し、認容される可能性があると思料される場合には、破毀院刑事部にその請求の審査を請求する。
 
 欧州人権裁判所判決後刑事判決再審査委員会:2000615日法により設置されたものであり、人権及び基本的自由の保護のための欧州条約(以下「欧州人権条約」という。)に違反する判決を言い渡した裁判所と同系列かつ同審級の裁判所に事件を差し戻す前に、再審査の請求が受理可能でかつ理由のあるものか否かを確認するため、請求を選別する役割を果たす。
 
 仮釈放中央裁判所:2000615日法により設置されたものであり、受刑者からの仮釈放の請求について仮釈放地方裁判所がした裁判に対する上訴審として機能する。
 
破毀院には、裁判扶助事務所があり、その運営には、司法官、弁護士、国家公務員及び利用者が関与し、その事務所長は、破毀院長によって任命される。この事務所は、上告申立ての際に上告人又は被上告人からなされる弁護士費用の国庫負担の請求について審査・決定をするものであり、万人がその資力のいかんにかかわりなく破毀院にアクセスできることを保障している。
 
司法行政事務については、後述するように、裁判官については破毀院長、検察官については検事総長がそれぞれ独自の職権を有する。破毀院長及び検事総長の各指揮下に、司法官によって構成される事務総局が置かれる。事務総局の司法官は、破毀院長の側近として、その補佐官並びに人事、管理運営及び広報の各責任者としての職務を行う。破毀院長の事務総局には、内部管理部門とIT部門がある。IT部門は、ハードウェアとソフトウェアの利用及び保守を担当する一方で、破毀院の構成員に対するIT関連の技術支援や教育研修も担当する。
 
破毀院長、部長判事、検事総長及び3名の次長検事からなる幹部会(Bureau)」には、特別な職権が付与されている。幹部会は、「法律及び政令(デクレ)により付与された権限に属する事項について合議により決定する」。幹部会は、特に、開廷日(数)及び開廷時間を決定し、全国の鑑定人名簿を作成する。幹部会は、破毀院長の助言者の役割も果たし、破毀院長は、破毀院の組織や運営に関する重要な問題について幹部会に諮ることができる。
 
破毀院には、他のすべての裁判所と同様に書記課が置かれており、破毀院の様々な事務を担っている。書記課の長である統括書記は、破毀院長の監督下で書記課の運営について責任を負う。検事局には、独自の事務局があり、統括書記がその長を務める。

破毀院の構成員
 
フランスの司法制度における根本的な区別であるが、裁判官と検察官という基本的な区別をする必要がある。裁判官は、判決をすることを主たる職務とする。検察官は、公判において弁論を行い、そのことによって、法令が正当に適用されているかどうかを監視し、法を擁護することを任務とする。
 
裁判官
 
 破毀院の裁判官として、破毀院長、部長判事、破毀院判事(conseillers)及び破毀院調査官(conseillersréférendaires)が挙げられる。
 
 破毀院長は、裁判事務上の職権とともに司法行政事務上の職権を有する。まず、破毀院長は、破毀院大法廷及び混合部の裁判長を務め、自ら望ましいと判断する場合には、部の一つを主宰する。破毀院長は、上告審において当事者がした急速審理請求について判断し、趣意書の提出期限を短縮することができる。また、破毀院長は、破毀院に対して訴訟当事者がした公正証書の偽造確認の申立てについて、その受理可能性を判断する。さらに、法定期間内に上告趣意書を提出しなかったことによる上告の失効、上告の不受理及び取下げの確認も行うほか、当事者がした事件簿からの抹消請求について判断する。加えて、破毀院長は、裁判扶助事務所の決定に対して不服申立てを受けたときは、これを裁定する。そして、破毀院長は、破毀院判事、破毀院調査官及び部付書記を六つの部に配属し、幹部会を主宰するとともに、事務の管理において統括書記を指揮する。
 
 破毀院長は、破毀院における裁判事務上及び司法行政事務上の職務以外に、院外においてもとりわけ重要な活動を行う。その例として、破毀院長は、次に掲げる会議を主宰する。
- 裁判官の懲戒及び裁判官の人事にかかわる場合の司法官職高等評議会(2008723日第五共和制憲法改正法による司法官職高等評議会の改革以降)
- 司法官昇進委員会
- 国立司法学院理事会(この理事会は、司法修習生の養成や在職中の司法官の継続研修のカリキュラムの策定において重要な役割を担う。)
破毀院長は、フランスの最高位の司法官であるため、様々な国家機関の相手方として協議・諮問を受けるとともに、フランスの司法官を代表して、しばしば国内外の行事に列席する。破毀院長は、とりわけ破毀院における訴訟手続のみならず、司法にかかわる重要な改革についても、これらに関する法律案・政令案の草稿について諮問を受ける。このほかにも、破毀院長の職務の独立性とその職務に付随する権威にかんがみ、法は、破毀院長に対し、種々の会議の主宰者や構成員を指名する権限を与えている。
 
 数年前から、破毀院長は、年に一度、すべての控訴院長を集めて会同を開催し、破毀院各部の代表者及び司法省の代表者参列の下、全国の司法裁判所で生じている新たな法律問題について意見交換を行っている。この会同は、控訴院と破毀院との間でその後四半期ごとに行われる書簡によるやり取りも含めて、すべての司法機関間のつながりを緊密化するための有用な方法となっている。これによって、破毀院は、取り扱うべき事件が数多くある中で、法律審としての任務を果たすための優先事項を見定めることができるのである。
 
 7部長判事は、その部の裁判体の弁論において裁判長を務める。部長判事が欠席する場合にはその部における最古参(doyen)の破毀院判事が、最古参の破毀院判事も欠席する場合には出席する破毀院判事の中で最古参のものが、それぞれ弁論の裁判長を務める。
 
 Conseillerと称される破毀院判事120名おり、これに加えて、控訴院長として任命される35名とパリ大審裁判所長として任命される1名も破毀院判事の肩書きを有する。破毀院判事は、司法官職高等評議会の提案に基づき、共和国大統領によって任命される。破毀院判事は、主に司法系統の司法官の中から選任されるが、法学の大学教授及び国務院・破毀院付弁護士出身の者もいる。これらの破毀院判事のほかに、破毀院特任判事(10名)がいるが、担う職務は破毀院判事と同様である。破毀院特任判事は、その職能及び経験を理由として5年の任期で任命される。
 
 破毀院判事は、様々な委員会や公的機関における役職に就くこともあるが、その場合には、通常、破毀院長による指名又は提案に基づいて任命される。
 
 破毀院の各部においては、最古参者(doyen)と称される、その部に配属されて着任した日が最も早い破毀院判事がすべての事件の管理役を務める。
 
 70を数える破毀院調査官は、事実審裁判所に所属している司法官の中から選任されるものであり、10年を超えて在職することができない。破毀院調査官は、評議において発言権を有するが、評決の際の議決権は有しない。ただし、自己が報告官を務めた事件については、破毀院調査官も評決の際の議決権を有する。破毀院調査官は、資料・調査・報告課と協力しつつ、研究及び判決要旨作成業務も行う。
 
検事局
 
 検事総長を頂点とし、7次長検事premiers avocats généraux)が検事総長を補佐する。その他に、予算定員上33名の破毀院検事及び5名の破毀院調査検事を擁する。検察の職務は、検事総長一人に付託されており、検事総長は、適材適所の観点から各検察官を各部に配属する。検事総長は、相当と判断するときは、各部の公判において自ら弁論をすることができる。検事総長及びその他の破毀院の検察官は、事実上、司法大臣から独立しており、破毀院の検察官は検事総長に従属せず、検事総長は、破毀院の検察官に指示・命令を出さない。
 
 破毀院検事局の任務、職務及び権限は特殊なものである。検事局は、司法の運営において牽引役を果たすものであるが、破毀院においては、法律解釈の画一性並びに立法者意思、公益及び公序との適合性を監視することを主な任務とする。検事局は、また、破毀院のみならず、全国の下級裁判所においても判例の統一性を確保しなければならない。
 
 この観点から、検事総長は強大な特権を有する。民事においては、「法律の利益のために」法の適用を誤った判決について破毀院に破棄を求めて審査を申し立てることができる。検事総長は、司法大臣の指示に基づき、裁判官の越権行為について破毀院に上告することもできる。刑事においては、法律の利益のための上告は、司法大臣の命令に基づいて行うものと、検事総長が自発的に行うものの両方が可能である。さらに、検事総長は、事件を混合部又は大法廷に回付するよう請求する権限を有する。
 
 検事総長は、破毀院と密接な関係を有する各種委員会のほか、資格の停止又は剥奪の決定を受けた司法警察員による不服申立てを裁定する委員会にも参加する。検事総長は、破毀院に対し、再審請求、公正を疑わせる正当な事由又は治安上の理由による別の裁判所への事件移送請求、管轄指定請求並びに司法官及び一定の公務員が犯した重罪又は軽罪に係る予審裁判所又は判決裁判所の選定請求をすることができる。
 
 検事総長は、共和国法院(Cour de justice de la République)の検察官としての職務も行うが、その場合には、次長検事及び2名の破毀院検事がその補佐を務める。
 
 さらに、検事総長は、司法官総体の管理運営及びその懲戒にも参画する。それゆえ、検事総長は、司法官昇進委員会及び国立司法学院理事会の構成員となっている。2008723日第五共和制憲法改正法に基づく司法官職高等評議会の改革以後、検事総長は、司法官職高等評議会における検察官の懲戒に係る部会を主宰する。

国務院・破毀院付弁護士会
 
破毀院の手続においては、訴訟当事者の代理及び弁護を確実に行うため、専門特化した弁護士が存在する。この弁護士は、破毀院の手続における独占権を有する。ただし、破毀院の管轄に属する職業団体における選挙及び公職選挙に関する訴訟については、訴訟当事者が自ら弁論することが可能であるため、この限りでない。単一の弁護士会に所属するこの国務院・破毀院付弁護士は、(革命以前の)国王顧問会議(Conseils du roi)付弁護士の継承者であり、その歴史的な経緯にちなんで、しばしば法院弁護士(avocat aux Conseils)と呼ばれる。弁護士会憲章は、1817910日の王令をその起源とする。この王令は、時代を経て必要とされた若干の変更が加えられてきたが、現在も効力を有している。国務院・破毀院付弁護士は職株(office)の保有者であり、それゆえ、その数は60名に限定されている。ただし、1978315日の政令(デクレ)により、専門職民事組合もこれらの職株を保有することが認められ、一組合につき自然人3名まで共同経営者たる弁護士を有することができるようになった。201011日現在の国務院・破毀院付弁護士の総数は、単独経営の弁護士と共同経営者たる弁護士を合わせて97名である。
 
国務院・破毀院付弁護士になるには、厳しい資格要件を満たす必要があり、3年の実務研修を受けた後に試験に合格するか、非常に厳密に規定された客観的基準によって定められる職能を有していなければならない。国務院・破毀院付弁護士は、権利譲渡人(国務院・破毀院付弁護士)から推薦を受けた権利譲受人(全部承継を受ける弁護士又は共同経営者となる弁護士)が権利譲渡人に補償金を支払った時点で、その推薦に基づき、司法大臣の命令(アレテ)により任命される。補償金の額は、国務院・破毀院付弁護士会及び司法省の監督を受ける。この補償金の支払いについては、融資の便宜も存在する。このような最高裁判所である破毀院付きの専門特化した弁護士会の制度は、EUの各機関から、司法の公役務性を理由に必要なものとして認知されている。
 
国務院・破毀院付弁護士会内部の綱紀は、委員長1名と11名の委員によって構成される綱紀委員会により保持される。委員会の構成員は、いずれも3年の任期で選任され、毎年三分の一の委員が改選される。理事会(Conseil de l’Ordre)は、法院弁護士の職業倫理の策定をその主な任務とし、法院弁護士が個人責任を問われ得る行為について見解を示す。
 
国務院・破毀院付弁護士は、裁判所補助吏でもあり、破毀院の運営に深く関与する。各弁護士事務所は、裁判扶助を受ける訴訟当事者に対し法的な支援を行う。弁護士の中には、裁判扶助事務所において職務を行うものや、刑事事件について破棄を導き得る攻撃防御方法を見出すため上告申立ての内容を検討するものもいる。より一般的に言えば、国務院・破毀院付弁護士の役割は、訴訟当事者の利益を擁護するとともに裁判所をより良く機能させるという相互に関連しかつ不可分な要請に応えることである。
 

上告申立て
 
 民事においては、上告は、国務院・破毀院付弁護士を介して、破毀院の書記課に申し立てる(ただし、公職選挙に関する上告申立ては、訴訟当事者又は特別の訴訟代理権を有する代理人が行うことができる(注1。)。上告期間は、反対の規定がない限り、破棄を求める原判決が送達された日から起算して2か月間である。刑事においては、上告は、判決が宣告された日から5日以内に、原審裁判所の書記課に申し立てなければならない。
 
 上告は、定義上当然のことながら、ある判決の破棄を求めるものであり、一定の手続規定に従うが、ここでは概括的な紹介を目的とするため、その詳細は省略する。上告には、二つの問題が存在する。一つは、上告することができる裁判の種類であり、もう一つは、原裁判の破棄を求めることができる理由である。
 
 民事において上告を申し立てることができるのは、最終審による判決に限られる。その上、一定の留保はあるが、その判決が事件の本案又は少なくとも「本案の一部」について言い渡されたものでなければならず、証拠調べや仮の処分を命じる決定は除外される。これら証拠調べ等を命じる決定については、後に本案についての判決が言い渡された時点で、初めて上告申立てが可能となる。
 
上告人は、破棄判決を得るために、原判決が法令に違反していることを立証しなければならない。これは、事実認定は本案裁判官の専権に属し、破毀院は、事実認定に関与せず、事実認定に関する議論は除外されることを意味する。
 
 刑事においては、「予審部の決定並びに重罪、軽罪及び違警罪に関して事実審の最終審裁判所が宣告した判決は、法令違反がある場合には破棄される」。他方、一定の条件下で破毀院の刑事部長判事に即時上告許可の申立てができるという特別の規則があり、中間判決についてはこの特別の規則に従うこととなる。刑事訴訟法典においては、法令違反以外にも上告申立ての理由となる手続上の瑕疵に当たる様々な事由が規定されており、これらの規定の内容は、欧州人権条約によって今日更に人権保障に厚いものとなっている。
 
 概括すると、民事・刑事の別を問わず、破毀院による統制は、結局のところ、法規範統制(contrôle normatif)と、規律統制(contrôle dit disciplinaire)という二つの大きなカテゴリーに分類される。
 
 法規範統制は、主として、法令違反(民事・刑事)又は法的根拠の欠缺(民事)を理由とする申立てに応答する形式でなされる。法令違反でいう「法令」とは、憲法上の厳密な意味での法律のみならず、規則、慣習法及び、特に憲法第55条の規定により国内法に対する優位性が認められている国際条約等も含まれる。そうした意味では、EU法もここで特に挙げなければならない。一方、法的根拠の欠缺は、必ずしも本案裁判官による法令の誤った解釈適用だけを意味するものではなく、原裁判における裁判官の理由付けが不十分であることも想定される。これらの場合に加えて、さらに、裁判官による文書等の意味解釈の変性、判決理由の欠缺及び当事者の主張に対する応答の欠如も含まれる。破毀院は、とりわけ、この領域において、実体法・手続法の別や新旧を問わず法令の解釈統一(しばしば革新的である。)を図ろうとしている。そして、破毀院判例が形成されるのは、主にこの領域においてである。なお、判例については後述する。
 
 規律統制という表現が長らく用いられているが、この概念は、まず、裁判官による判決の導き方及び判決書の作成方法について裁判官が従うべき義務事項に関するものである。つまり、当事者の申立て及び攻撃防御方法の摘示方法、当事者の主張に対する応答方法並びに判決理由の説示方法に関する義務事項を本案裁判官に遵守させることを担保するものである。判決理由を付す義務には、判決主文を導く理由を述べる義務に加え、理由にくいちがいがないこと、不確実で疑わしい理由を用いないこと、及び提出された攻撃防御方法に対する応答を成さない無意味な理由を用いないことも包含される。民事においては、変性、すなわち文書の明確かつ正確な意味を事実審裁判官の解釈によって変質することも、規律統制の対象に含まれる。次に、裁判官の職業倫理上の責務、より一般的に言えば、公正な裁判の構成要素である諸原則(対審の原則(とりわけ攻撃防御方法が当事者の主張によってではなく、裁判官の職権によって提示されたとき)、公平の原則、裁判の公開の原則、及び合理的な期間内に判決をすること)に裁判官が違反したことを理由とする申立ても、規律統制の領域に属するものであると広く受け入れられている。特に、欧州人権条約第6条第1項の規定により適用される公平の原則は、判例の進化・発展をもたらし、司法機関及び独立行政機関等これに準じる各機関の判断及び手続の在り方に大きな影響を及ぼしている。
 
 このように広く受け入れられている規律統制は、破毀院にとって大きな負担となっている。というのも、膨大な数の上告事件において、この規律統制に関する攻撃防御方法が主張されているからである。しかしながら、一方で破毀院がその判決を統制する裁判所の数、多様性及び非同質性にかんがみるとともに、他方で法治国家における公正な裁判を行う義務の重要性にかんがみれば、この任務をおろそかにすることはできない。
 
 
(注1)2004820日のデクレは、弁護士による代理を義務付けない事件を、刑事事件以外では公職の選挙に関する事件にほぼ限定している。特に、労働事件についての上告は、国務院・破毀院付弁護士による代理が義務付けられることとなった。

上告審の事前手続及び判決
 
 上告申立てが破毀院書記課に登録された後、当該事件について、現在もなお(上告申立てを補うという意味で)「補充趣意書(mémoire ampliatif」と呼ばれる上告趣意書を提出することとなり、これが提出されない場合には、上告申立ては失効する。上告趣意書には、上告申立ての対象となっている原判決の破棄を得るために援用する法的攻撃防御方法を記載するとともに、当該攻撃防御方法を根拠付ける論証を展開しなければならない。被上告人は、答弁書を提出して反論することができる。当事者双方に指定されたこれらの書面を提出すべき期間(事件の性質によってこの提出期間は異なるが、民事では、原則として、上告趣意書は4か月、答弁書は上告趣意書の送達日から起算して2か月)経過後、事件は、報告(主任)裁判官を指名するため、その性質に応じて、破毀院の6か部のうちのいずれかの部、混合部又は大法廷に配点される。
 
 上告申立てが受理の要件を満たさない場合又はその根拠が薄弱である場合には、この段階で「上告却下(non-admission)」と呼ばれる簡易迅速な手続がとられる。2001625日法によって創設された上告却下手続は、少なくとも民事においては、1947年まで存在した上告審における事前審査が別の形で復活したと言うことができる。とはいえ、両者の間には大きな相違点が二つある。第一に、1947年までは「審理部」と呼ばれる事件の事前審査を担当する専門部が存在したが、現在、この種の上告申立てについては、各部がそれぞれ部内の3名(可変)の司法官によって構成される裁判体により決定を行っている。第二に、過去においては、刑事を除き、すべての上告事件は必ず審理部の事前審査を経なければならなかったが、現行制度においては、上告却下の判決が相当と思料される上告事件のみが各部内の裁判体によって取り扱われる。
 
 このような上告事件を選別する手続には、いくつかの利点が認められる。まず、手続の迅速化及び簡略化を図ることができる。上告却下の手続をするには、当然報告裁判官の入念な審査と検察官の意見を聴くことが必要となるが、上告却下の判決に理由を付す必要はない。次に、破毀院は、留意に値しない事件の処理から解放され、その任務の核心、すなわち真の意味で法令上の問題を提起する上告申立てについての破毀院の見解によって構築される判例を作成するという任務に専念することができる。この上告却下手続に付される事件の割合は高く、民事3か部では約30パーセント、刑事部では約35パーセントに上る。
 
 それ以外の事件については、精密な審理をすることが必要であり、部長判事が指名した報告裁判官が書面審査を行う。報告裁判官の役割は、一件記録を調査した後、報告書、意見メモ及び一個又は数個の判決案を作成することである。報告書は、事実及びそれまでにとられた手続の摘示、攻撃防御方法の分析、判断すべき法律問題の表示及びその重要性、有用な判例及び学説の引用、一個又は数個の判決案並びに当該事件を取り扱うに適した裁判体の構成についての提案から構成される。意見メモには、報告裁判官の意見のみが記される。判決案を複数作成するかどうかについては、報告裁判官の判断にかかっており、報告裁判官が複数の結論が考えられる又は議論に付されるべきであると判断するか否かによって決められる。
 
 そして、報告書(意見メモ及び判決案は除く。これらは評議に参加する裁判官のみに供するためのものである。)を含む一件記録は、検察官に送付され、検察官は、意見を述べるためこれを検討する。弁論期日の約1週間前に、部長判事と当該部の最古参の判事が期日を決められた事件について協議する。この「協議」は、報告裁判官及び当該部の中で事件を審理することになる裁判体が特別に留意すべき難題が提起される可能性があるかどうかを事前に検討することを目的とする。
 
 この裁判体は、1997423日法により、上告申立てに対する結論(上告棄却、原判決破棄、上告不受理又は上告却下の別を問わない。)が明らかである場合には、3名の司法官によって構成される。その結論が明らかでない場合には、裁判体は、5名以上の議決権を有する司法官によって構成される。これら二つの裁判体を言い表すのに、前者については「小合議体(formation restreinte)」、後者については「係合議体(formation de section)」という用語がしばしば用いられる。いずれの場合も、検察官が意見を述べた後、事件は評議に付される。評議においては、まず報告裁判官が自ら作成した報告書の要点を再度口頭で説明し、自身の意見を述べる。次いで、最古参の判事を筆頭に年次の古い判事から順に意見を述べ、最後に裁判長が意見を述べる。その後、判決の全般的な趣旨のみならず、その表現や言い回し(結論そのもの以上に重要である。)を含む法廷意見が多数決による投票で決定される。投票結果は判決書に記載されない。個別意見表明の制度はない。
 
 上告棄却の場合には、原判決が確定する。原判決破棄については、全部破棄の場合(原判決が取り消され、その結果、訴訟当事者は、原判決が言い渡される前の状況に立ち戻る。)と一部破棄の場合(原判決の主文の一部のみが取り消される。)がある。破棄の効力は、原則として、上告人と被上告人のみに及ぶが、刑事においては、例外的に、破毀院が上告申立てをしなかった当事者にまで取消しの効果を及ぼす権限を有する。
 
 破棄判決の場合には、大多数の事件は原審と同じ性質の別の裁判所又は同一の裁判所の別の裁判体に差し戻される。事件の差戻しを受けた裁判所は、破棄院大法廷判決による場合を除き、破毀院の判決の内容に従う義務はない。他方、破毀院は、本案について新たに判断する必要がない場合又は本案裁判官が専権的に認定した事実に基づいて、破毀院が適切な法規範を適用できる場合には、事件を差し戻すことなく原判決を破棄することができる。その目的は、手続の迅速化を図り、訴訟当事者に合理的な期限内に判決を受ける権利という公正な裁判から派生する重要な要請の一つを保障することにある。
 

破毀院の判例
 
 破毀院は、司法系統の裁判所の頂点に立ち、唯一無二の存在であり、かつ、それが第一の任務であるという理由から、判例の統一において重要な役割を果たしている。このような破毀院の任務がゆえ、破毀院は、特化しており、事実審ではない。かくして、破毀院は、その法規範が実体法であるか手続法であるかを問わず、また、その新旧を問わず、専らこれを解釈することが求められており、このことが破毀院判決の重要性を更に高めている。破毀院による法令解釈は、破毀院において提出された攻撃防御方法、特に法令違反を理由とする攻撃防禦方法に対する応答として判決書においてなされる。こうして作られた判例は、その理論構成、進化及び射程範囲について様々な批評を受けることとなる。
 
 それぞれの事件について原判決において法令が正しく適用されているかどうかを確認するという破棄の手法の性質上、判例は、上告申立て及び援用された攻撃防御方法に応じて徐々に形成される。「法規的判決」と呼ばれる行為は、「裁判官は、自己に係属する事件について、一般的に適用される規則を制定するような方法で判決をしてはならない。」と規定する民法典第5条により、フランスにおける他のすべての裁判所と同様、破毀院においても禁じられている。それゆえ、判例は、攻撃防御方法によって提起される問題に応じて、徐々に形成されていくこととなる。こうして、破毀院は、フランス社会--かつ現在では欧州社会全体--に耳を傾けながら、これらの社会における政治的、社会的、経済的、国際的、技術的及びテクノロジー上の変化に対応しつつ法を語るのである。破毀院に提起される問題は多様性を極めており、法解釈に当たって突き当たる大半の問題に対して、種々の考慮要素の間でバランスと整合性をとりながら答を提示することが求められている。
 
 こうして確保される柔軟性により、時が経過しても、社会の変化及びその変化の受け止められ方に照らし合わせて、法律に対して与えられる意味を解釈し直すことが可能となる。法令上規定が欠缺している、不明瞭である又は不十分であるとの理由により、裁判官が裁判を拒否することは民法典第4条により禁じられているが、このような柔軟性により、実定法上明記されていない部分を補うことが可能となる。破毀院は、この点において、重要な役割を果たしている。法が明示的に規定していない場合には、破毀院は、主として、次の二つの手法をとる。第一に、立法者が想定していなかった状況に対して法令の規定を適用する手法である。この例として、1804年の民法典を主たる起源とする不法行為責任に関する規定を、自動車事故に関する事件に対して適用する場合が挙げられる。第二に、特に、詐害の意思はすべてのものを腐らせる(詐害の意思でなされたすべての法律行為は、無効の訴えの対象となり得る)との原則(Fraus omnia corrumpit)、不当利得の理論、常軌を逸した近隣妨害の理論又は防御権の原則などの法の一般原則を援用する手法である。この場合には、当然これらの一般原則が実定法の規定に抵触しないことが前提となる。しかしながら、このような手法には限界がある。すなわち、法律の規定自体が、様々な状況の変化が原因で異論の余地が極めて大きくなっているにもかかわらず、その解釈の変更を許容しない場合があるのである。このような場合には、破毀院は、年次報告書に当該規定を今後も維持した場合にどのような帰結を招くかにつき言及し、その改正を提案する。
 
 判例は、小さな修正・変更を経て進化していくものである。大きく方向転換されることもあるが、その性質上、判例が急変することは例外的である。破毀院の司法官は、本案裁判所、当事者及びその弁護士にとって裁判・行為の規準となる安定した判例を形成することに意を用いている。法規範の形成は、継続なくしてあり得ない。破毀院の権威にかんがみれば、なおさらそうである。しかし、過去の破毀院判決が何度も示してきたように、判例は、不動のものではあり得ない。判例のこのような論理必然的な進化により、場合によっては大変革に至ることもあるが、その大半は破毀院内部における熟考の結果であり、時として、学説による批判又は本案裁判所の抵抗などを更に受けた結果でもある。いずれにせよ、判例が変更されるのは、熟考の末のことである。というのも、判例変更の効果は当該判決が言い渡された事件のみならず、連鎖反応により、同じ問題に関係するすべての係属中の事件にまでその影響が及ぶからである。換言すれば、判例変更は、事実上遡及的効力を有しており、判例変更によってそれまでの慣行が糾弾され、その見直しが迫られることになるのである。破毀院は、こうした理由から、社会の変化に対して法を適応させていく必要性と法的安定性の要請の間で難しいバランスをとることを迫られるのである。特に重要な判例変更は大法廷で取り扱われることが多いが、必ずしも大法廷での審理が義務付けられているわけではない。
 
 しかしながら、破毀院の判例は、司法・法律関係者ばかりでなく、企業や個人に広く周知されてこそ、その意義が大きくなるものである。そのため、破毀院の資料・調査課の責任において、関心を有する市民が多様であることに対応して様々な方法により判例を広く知らせることが重視されている。フランス革命の時代から利用されてきた伝統的な方法として、二つの月報が挙げられる。一つは民事、もう一つは刑事に関するものであり、破毀院各部の部長判事がその公表を提案した判例が掲載される。現在では、これらのほかに、季刊の「労働法」及び隔月刊の公報がある。この隔月刊の公報は、すべての裁判所に送付されるものであり、破毀院のみならず下級裁判所が言い渡した最も重要な判決すなわち本案裁判官にとって特別の重要性を持つ判決の要旨、検察官の意見及び報告裁判官の報告が掲載されている。また、この公報には、代表的な学説や控訴院長会同等の破毀院が開催した会議の議事録等も掲載される。
 
 19世紀以降利用されているもう一つの方法として、法律関係の雑誌において学説的な評釈を付した上で判例を紹介するというやり方があり、特に重要な判決については、前述のような検察官の意見や裁判官の報告も掲載される。
 
 他方、コンピュータ及びインターネットの発達により、市民は「レジフランス」というウェブサイト(http://www.legifrance.gouv.fr)上で、オンライン・データベースに無料でアクセスすることが可能となっている。このウェブサイトでは、1960年以降の民事月報及び1963年以降の刑事月報に掲載されたすべての判決とともに、1987年以降のすべての判決(公刊の有無を問わない。)の全文を閲覧することができる。破毀院のサイト(https://www.courdecassation.fr)では、代表的な判決及び検察官の意見を掲載しており、定期刊行物を閲覧することもできる。
 
 破毀院の年次報告書については、格別の位置付けをしなければならない。司法組織法典において、破毀院は、司法大臣に事件の処理状況及び審理期間を毎年報告しなければならない旨規定されている。年次報告書の作成を目的として、報告・調査委員会が組織されており、破毀院長及び検事総長からそれぞれ指名された部長判事、破毀院判事並びに各部及び検事局の代表者とともに、資料・調査課長によって構成される。年次報告書には、とりわけ、法律及び規則の改正の提案、当年に言い渡された特に重要な判決の注釈及び破毀院の構成員が行った法的研究が掲載される。年次報告書は、破毀院のウェブサイトにおいて閲覧可能である。
 

破毀院資料・調査・報告課
 
 資料・調査・報告課は、破毀院長の指揮下に置かれ、破毀院部長判事の肩書きを有する高位の司法官が長を務め、主に司法官(破毀院付司法官)及び非司法官(統括書記及び書記)によって構成される。
 
 資料・調査・報告課は、まず、事件処理の合理化に関与する。この観点から、上告事件を各部に振り分ける段階で、同一の又は類似する問題を提起する事件を関連付けて、破毀院内又は本案裁判所との間に生じ得る判例の相違を最小化するための努力に寄与する。また、破毀院判事及び検事による調査研究において、必要な支援を行う。この課の中に設けられた欧州法観察室は、国内裁判所の裁判官が欧州法を適用する際に生じる問題に対応するための分析手段を提供する。
 
 さらに、資料・調査課は、特に電子的方法によって破毀院判決を他の裁判所に公表・伝達することにより、破毀院の判例政策の発展に貢献する。
 
 
 

破毀院に対する意見照会
 
 1991515日法により、破毀院が意見照会に対して意見を述べる権限を与えられた。この意見照会手続には、新法の解釈について破毀院の立場を迅速に知ることができるとともに、その適用により問題が生じるような法規範について破毀院が採用するであろう立場を十分見通すことができるという利点がある。意見照会手続については厳格に規定されており、いくつかの要件を満たす必要がある。
 
 司法系統の裁判所が、当該裁判所に訴訟が係属している間に論点の提起を受け、当該論点について破毀院に意見を照会する決定をして請求すること。(訴訟当事者が直接破毀院に意見照会することはできない。)
 意見を照会する論点が、法律問題であり、かつこれまでに判断が示されたものでないこと。
 当該論点が、重大な問題を含んでおり、かつ数多くの訴訟においても同様に提起されるものであること。
 破毀院は、法律に規定されたこれらの要件に、もう一つ要件を付加している。すなわち、当該論点が、破毀院に係属している上告申立てに関するものでないこと。その理由は、当該上告事件が係属している部の判断権を侵害しないためである。
 
刑事においては、2001625日法により、事件の性質、及び被告人が未決勾留又は司法監督を受けているときはその判決の宣告を遅延させることがないようにとの配慮から、別の制限が加えられている。
 
破毀院は、破毀院長が原則として主宰する特殊な合議体(その構成は意見照会が民事であるか刑事であるかによって異なる。)で、照会を受けた日から3か月以内に意見を示さなければならない。破毀院に意見照会をした裁判所は、法的にはその意見に従う義務を負わない。
 
このようにして破毀院が示す意見の数は、年間10個程度である。
破毀院の役割
 
 破毀院は、フランスの司法系統における最上級審の裁判所である。民事、商事、労働及び刑事に係る各訴訟は、まず、第一審裁判所(小審裁判所、大審裁判所、商事裁判所、労働裁判所等)において審理される。これらの裁判所の判決は、訴訟の重要性に応じて、軽微な事件については事実審の終審判決として言い渡されるが、大半の事件については、第一審判決として言い渡され、これに対して控訴院に上訴することができる。控訴院は、事実及び法律上の問題に関して、すべての点について新たに審理する。第一審裁判所が事実審の終審判決として言い渡した判決及び控訴院が言い渡した判決については、いずれも破毀院に上告することができる。破毀院は、司法系統の裁判所の頂点に位置することに加え、下級裁判所にはない次の二つの特徴を備えている。
 第一に、破毀院は、唯一無二の存在であることである。「フランス共和国全土において、破毀院は、一つしか存在しない」との基本原則が、司法組織法典において破毀院に関する規定の冒頭に明記されているのも、この原則が最も重要であるからである。破毀院の唯一無二性は、判例に統一性を持たせ、フランス全土における法解釈の同一性を保障するという破毀院の本質的な目的と不可分である。破毀院が唯一の存在であることによって、法解釈の統一性が保たれ、その結果、規範となる判例の作成が可能となる。この唯一性と統一性は、相互補完的な条件である。
 第二に、破毀院は、第一審裁判所及び控訴院が判決を言い渡した後の第三審裁判所ではないことである。破毀院は、本質的に、本案について判断するのではなく、原判決において専権的に認定された事実に対して法令が正しく適用されているかどうかを判断することを求められている。こうした理由から、厳密に言えば、破毀院は、上告申立ての対象となっている原判決が裁判した争訟についてではなく、原判決それ自体について判断するのである。破毀院は、実のところ、裁判官が言い渡した判決についての裁判官であり、事実審の裁判官が自ら認定した事実並びに提起を受けた事件及び論点について法令を正しく適用したか否かを判断する任務を負っているわけである。すべての上告は原判決の破棄を求めることを目的とするが、このように、破毀院は、これらの原判決において法令が正しく適用されているかどうか、あるいは適用に不備・誤りがあったかどうかについて判断する。
 
 破棄された原判決は取り消され、そして、破棄が差戻しを伴わない例外的な場合を除き、当該事件は破棄の範囲内で審理がやり直される。それゆえ、争訟の帰趨は、おのずとこの段階、すなわち破毀院における判断とかかわることになる。
 
破毀院は、これらの特徴を備えることにより独自性を有し、破毀院に申し立てられる上告は「特別」な上告と称される。このような特徴は、その歴史に由来し、フランス革命の出来事をその起源とする。すなわち、1790年11月27日法により、「破毀裁判所」(Tribunal de cassation)が創設され、それが共和暦12年フロレアル(花月、共和暦8月)28日の元老院決議(sénatus-consulte)によって破毀院(Cour de cassation)となったのである。
しかし、破毀院の歴史は、実際には更に時代を遡り、アンシアン・レジームの時代に司法権が行使されていた様式をその起源とする。当時、司法権は淵源として国王に由来していたことから、高等法院(Parlements)の決定に対して破棄を求めることが可能であり、破棄の求めの審理は国王顧問会議(Conseil du roi)が行っていた。フランス革命がもたらした主な産物として、この当初の存立基盤を失った国王顧問会議が政体の変化に即して破毀院として再構成され、国家元首に属していた権限が裁判官に移された。そして、19世紀になってその権威が確立され、それが完全に認知されるように至ったのである。
 
 このように破毀院が法的な権威のみならず、道徳的な権威をも有していることから、立法者は、破毀院に対し、様々な形態による裁判外の任務を付与している。その一例として、意見照会手続の導入が挙げられる。この手続により、破毀院は、一定の条件下において、事後ではなく事前に、すなわち事実審裁判官が判決を言い渡す前に、法解釈を統一する任務を遂行することができる。そして、破毀院が果たす役割も、次のように間接的に増大している。すなわち、その全部又は一部のメンバーが破毀院の司法官によって構成される裁判機関的性格を有する様々な機関が創設されており、また、その影響力や重要性が増している各種機関において、破毀院の司法官が裁判事務以外の役職に就くことがより多く見られるようになっている。

破毀院の組織
 
 破毀院の組織体制は、当然、法律審としての任務を負う裁判所の機能に適したものとなっている。とはいえ、破毀院が十全に機能するためには、強固な司法行政上の組織が存在することが必要である。
 
 裁判所としての破毀院は、複数の部によって構成されており、破毀院幹部会の定める改訂可能な基準に従って、各部に対して審理すべき上告事件が振り分けられる(事件の配点)。当初三つ(民事部、刑事部及び審理部(1947年に廃止))あった部は徐々に増え、現在6か部が置かれている。厳密な意味での民事3か部(民事第一部、民事第二部、民事第三部)に加え、商事・経済・財政部、社会(労働)部及び刑事部がある。各部には部長判事が配される。破毀院長は、それぞれの部が取り扱う上告事件の重大性いかんを考慮して、それに見合った数の判事を各部に配属する。したがって、各部に配属される判事の数は必ずしも同数とはならない。さらに、各部において、審理すべき上告事件の数に応じて、係が設けられる。各部内では、このように係に分かれおり、各係内の裁判体自体も一定していない。上告申立てが受理の要件を満たさず又は根拠が薄弱であり、「上告却下」と判断される場合及び上告申立てに対する結論が明らかである場合には、3名の裁判官によって判決が言い渡される。その他の場合には、5名以上の議決権を有する裁判官によって構成される合議体によって判決を言い渡さなければならない。各部は、例えば事件の判決が過去の判例を変更する可能性がある場合や、機微な論点について判断を示す必要がある場合などには、部長判事の決定により、大合議体(Formation plénière)で審理を行うことができる。
 
 破毀院においては、このほかに、常設ではないが、各部の裁判官によって構成される裁判体(大法廷Assemblées plénières)、及び三つ以上の部の裁判官から構成される裁判体(混合部Chambres mixtes)を編成することがある。これらの裁判体の裁判長は、破毀院長又は最古参の部長判事が務める。
 
 大法廷は、破毀院長、各部の部長判事及び最古参判事並びに各部から選ばれた1名の判事によって構成され、総数は19名となる。事件を大法廷に回付するか否かの決定は、破毀院長又は当該事件の係属する部が行う。一般原則にかかわる問題を提起する事件は、大法廷で取り扱うことができる。一度判決が破棄された後に差戻審の判決に対して同じ理由で破棄が申し立てられたときは、大法廷で当該事件を取り扱わなければならない。検事総長が弁論開始前に大法廷に回付するよう請求したときも、当然に大法廷で取り扱うこととなる。大法廷が言い渡した破棄判決は、差戻審の裁判所が大法廷のした法律問題についての決定に従わなければならないという重要な特殊性を有する。
 
 混合部は、破毀院長又はその代理者である判事のほか、混合部を構成する各部から4名の裁判官(部長、最古参の判事及びその他の判事2名)によって構成される。例えば、三つの部の裁判官から構成される混合部の総数は13名となる。複数の部の所掌事務にかかわる問題を提起する事件、及び複数の部の間で問題について異なる判断がされ又はされる可能性のある事件は、混合部に回付しなければならない。また、最初に上告事件を審理した部の評決において裁判官の意見が可否同数となったときも、混合部に回付しなければならない。さらに、検事総長が弁論開始前に混合部に回付するよう請求したときも、当然に混合部に回付されることとなる。この混合部という裁判体は、主に、各部間に生じ得る判例の不一致を解消するために有用である。
 
 各部には、一名又は数名の書記が配属される。
 
また、破毀院は、裁判機関的性質を有するいくつかの委員会に対し、その運営や活動において必要となる司法官、事務設備及び執務場所を提供している。こうした理由から、これらの委員会は破毀院と密接な関係に置かれている。その例として以下の委員会が挙げられる。
 
 勾留補償中央委員会:免訴決定又は無罪判決によって終局した一連の刑事手続においてなされた未決勾留による損害の補償について、控訴院長がした決定に対する上訴審として機能する。
 
 刑事再審委員会:再審請求を審査し、認容される可能性があると思料される場合には、破毀院刑事部にその請求の審査を請求する。
 
 欧州人権裁判所判決後刑事判決再審査委員会:2000615日法により設置されたものであり、人権及び基本的自由の保護のための欧州条約(以下「欧州人権条約」という。)に違反する判決を言い渡した裁判所と同系列かつ同審級の裁判所に事件を差し戻す前に、再審査の請求が受理可能でかつ理由のあるものか否かを確認するため、請求を選別する役割を果たす。
 
 仮釈放中央裁判所:2000615日法により設置されたものであり、受刑者からの仮釈放の請求について仮釈放地方裁判所がした裁判に対する上訴審として機能する。
 
破毀院には、裁判扶助事務所があり、その運営には、司法官、弁護士、国家公務員及び利用者が関与し、その事務所長は、破毀院長によって任命される。この事務所は、上告申立ての際に上告人又は被上告人からなされる弁護士費用の国庫負担の請求について審査・決定をするものであり、万人がその資力のいかんにかかわりなく破毀院にアクセスできることを保障している。
 
司法行政事務については、後述するように、裁判官については破毀院長、検察官については検事総長がそれぞれ独自の職権を有する。破毀院長及び検事総長の各指揮下に、司法官によって構成される事務総局が置かれる。事務総局の司法官は、破毀院長の側近として、その補佐官並びに人事、管理運営及び広報の各責任者としての職務を行う。破毀院長の事務総局には、内部管理部門とIT部門がある。IT部門は、ハードウェアとソフトウェアの利用及び保守を担当する一方で、破毀院の構成員に対するIT関連の技術支援や教育研修も担当する。
 
破毀院長、部長判事、検事総長及び3名の次長検事からなる幹部会(Bureau)」には、特別な職権が付与されている。幹部会は、「法律及び政令(デクレ)により付与された権限に属する事項について合議により決定する」。幹部会は、特に、開廷日(数)及び開廷時間を決定し、全国の鑑定人名簿を作成する。幹部会は、破毀院長の助言者の役割も果たし、破毀院長は、破毀院の組織や運営に関する重要な問題について幹部会に諮ることができる。
 
破毀院には、他のすべての裁判所と同様に書記課が置かれており、破毀院の様々な事務を担っている。書記課の長である統括書記は、破毀院長の監督下で書記課の運営について責任を負う。検事局には、独自の事務局があり、統括書記がその長を務める。

破毀院の構成員
 
フランスの司法制度における根本的な区別であるが、裁判官と検察官という基本的な区別をする必要がある。裁判官は、判決をすることを主たる職務とする。検察官は、公判において弁論を行い、そのことによって、法令が正当に適用されているかどうかを監視し、法を擁護することを任務とする。
 
裁判官
 
 破毀院の裁判官として、破毀院長、部長判事、破毀院判事(conseillers)及び破毀院調査官(conseillersréférendaires)が挙げられる。
 
 破毀院長は、裁判事務上の職権とともに司法行政事務上の職権を有する。まず、破毀院長は、破毀院大法廷及び混合部の裁判長を務め、自ら望ましいと判断する場合には、部の一つを主宰する。破毀院長は、上告審において当事者がした急速審理請求について判断し、趣意書の提出期限を短縮することができる。また、破毀院長は、破毀院に対して訴訟当事者がした公正証書の偽造確認の申立てについて、その受理可能性を判断する。さらに、法定期間内に上告趣意書を提出しなかったことによる上告の失効、上告の不受理及び取下げの確認も行うほか、当事者がした事件簿からの抹消請求について判断する。加えて、破毀院長は、裁判扶助事務所の決定に対して不服申立てを受けたときは、これを裁定する。そして、破毀院長は、破毀院判事、破毀院調査官及び部付書記を六つの部に配属し、幹部会を主宰するとともに、事務の管理において統括書記を指揮する。
 
 破毀院長は、破毀院における裁判事務上及び司法行政事務上の職務以外に、院外においてもとりわけ重要な活動を行う。その例として、破毀院長は、次に掲げる会議を主宰する。
- 裁判官の懲戒及び裁判官の人事にかかわる場合の司法官職高等評議会(2008723日第五共和制憲法改正法による司法官職高等評議会の改革以降)
- 司法官昇進委員会
- 国立司法学院理事会(この理事会は、司法修習生の養成や在職中の司法官の継続研修のカリキュラムの策定において重要な役割を担う。)
破毀院長は、フランスの最高位の司法官であるため、様々な国家機関の相手方として協議・諮問を受けるとともに、フランスの司法官を代表して、しばしば国内外の行事に列席する。破毀院長は、とりわけ破毀院における訴訟手続のみならず、司法にかかわる重要な改革についても、これらに関する法律案・政令案の草稿について諮問を受ける。このほかにも、破毀院長の職務の独立性とその職務に付随する権威にかんがみ、法は、破毀院長に対し、種々の会議の主宰者や構成員を指名する権限を与えている。
 
 数年前から、破毀院長は、年に一度、すべての控訴院長を集めて会同を開催し、破毀院各部の代表者及び司法省の代表者参列の下、全国の司法裁判所で生じている新たな法律問題について意見交換を行っている。この会同は、控訴院と破毀院との間でその後四半期ごとに行われる書簡によるやり取りも含めて、すべての司法機関間のつながりを緊密化するための有用な方法となっている。これによって、破毀院は、取り扱うべき事件が数多くある中で、法律審としての任務を果たすための優先事項を見定めることができるのである。
 
 7部長判事は、その部の裁判体の弁論において裁判長を務める。部長判事が欠席する場合にはその部における最古参(doyen)の破毀院判事が、最古参の破毀院判事も欠席する場合には出席する破毀院判事の中で最古参のものが、それぞれ弁論の裁判長を務める。
 
 Conseillerと称される破毀院判事120名おり、これに加えて、控訴院長として任命される35名とパリ大審裁判所長として任命される1名も破毀院判事の肩書きを有する。破毀院判事は、司法官職高等評議会の提案に基づき、共和国大統領によって任命される。破毀院判事は、主に司法系統の司法官の中から選任されるが、法学の大学教授及び国務院・破毀院付弁護士出身の者もいる。これらの破毀院判事のほかに、破毀院特任判事(10名)がいるが、担う職務は破毀院判事と同様である。破毀院特任判事は、その職能及び経験を理由として5年の任期で任命される。
 
 破毀院判事は、様々な委員会や公的機関における役職に就くこともあるが、その場合には、通常、破毀院長による指名又は提案に基づいて任命される。
 
 破毀院の各部においては、最古参者(doyen)と称される、その部に配属されて着任した日が最も早い破毀院判事がすべての事件の管理役を務める。
 
 70を数える破毀院調査官は、事実審裁判所に所属している司法官の中から選任されるものであり、10年を超えて在職することができない。破毀院調査官は、評議において発言権を有するが、評決の際の議決権は有しない。ただし、自己が報告官を務めた事件については、破毀院調査官も評決の際の議決権を有する。破毀院調査官は、資料・調査・報告課と協力しつつ、研究及び判決要旨作成業務も行う。
 
検事局
 
 検事総長を頂点とし、7次長検事premiers avocats généraux)が検事総長を補佐する。その他に、予算定員上33名の破毀院検事及び5名の破毀院調査検事を擁する。検察の職務は、検事総長一人に付託されており、検事総長は、適材適所の観点から各検察官を各部に配属する。検事総長は、相当と判断するときは、各部の公判において自ら弁論をすることができる。検事総長及びその他の破毀院の検察官は、事実上、司法大臣から独立しており、破毀院の検察官は検事総長に従属せず、検事総長は、破毀院の検察官に指示・命令を出さない。
 
 破毀院検事局の任務、職務及び権限は特殊なものである。検事局は、司法の運営において牽引役を果たすものであるが、破毀院においては、法律解釈の画一性並びに立法者意思、公益及び公序との適合性を監視することを主な任務とする。検事局は、また、破毀院のみならず、全国の下級裁判所においても判例の統一性を確保しなければならない。
 
 この観点から、検事総長は強大な特権を有する。民事においては、「法律の利益のために」法の適用を誤った判決について破毀院に破棄を求めて審査を申し立てることができる。検事総長は、司法大臣の指示に基づき、裁判官の越権行為について破毀院に上告することもできる。刑事においては、法律の利益のための上告は、司法大臣の命令に基づいて行うものと、検事総長が自発的に行うものの両方が可能である。さらに、検事総長は、事件を混合部又は大法廷に回付するよう請求する権限を有する。
 
 検事総長は、破毀院と密接な関係を有する各種委員会のほか、資格の停止又は剥奪の決定を受けた司法警察員による不服申立てを裁定する委員会にも参加する。検事総長は、破毀院に対し、再審請求、公正を疑わせる正当な事由又は治安上の理由による別の裁判所への事件移送請求、管轄指定請求並びに司法官及び一定の公務員が犯した重罪又は軽罪に係る予審裁判所又は判決裁判所の選定請求をすることができる。
 
 検事総長は、共和国法院(Cour de justice de la République)の検察官としての職務も行うが、その場合には、次長検事及び2名の破毀院検事がその補佐を務める。
 
 さらに、検事総長は、司法官総体の管理運営及びその懲戒にも参画する。それゆえ、検事総長は、司法官昇進委員会及び国立司法学院理事会の構成員となっている。2008723日第五共和制憲法改正法に基づく司法官職高等評議会の改革以後、検事総長は、司法官職高等評議会における検察官の懲戒に係る部会を主宰する。

国務院・破毀院付弁護士会
 
破毀院の手続においては、訴訟当事者の代理及び弁護を確実に行うため、専門特化した弁護士が存在する。この弁護士は、破毀院の手続における独占権を有する。ただし、破毀院の管轄に属する職業団体における選挙及び公職選挙に関する訴訟については、訴訟当事者が自ら弁論することが可能であるため、この限りでない。単一の弁護士会に所属するこの国務院・破毀院付弁護士は、(革命以前の)国王顧問会議(Conseils du roi)付弁護士の継承者であり、その歴史的な経緯にちなんで、しばしば法院弁護士(avocat aux Conseils)と呼ばれる。弁護士会憲章は、1817910日の王令をその起源とする。この王令は、時代を経て必要とされた若干の変更が加えられてきたが、現在も効力を有している。国務院・破毀院付弁護士は職株(office)の保有者であり、それゆえ、その数は60名に限定されている。ただし、1978315日の政令(デクレ)により、専門職民事組合もこれらの職株を保有することが認められ、一組合につき自然人3名まで共同経営者たる弁護士を有することができるようになった。201011日現在の国務院・破毀院付弁護士の総数は、単独経営の弁護士と共同経営者たる弁護士を合わせて97名である。
 
国務院・破毀院付弁護士になるには、厳しい資格要件を満たす必要があり、3年の実務研修を受けた後に試験に合格するか、非常に厳密に規定された客観的基準によって定められる職能を有していなければならない。国務院・破毀院付弁護士は、権利譲渡人(国務院・破毀院付弁護士)から推薦を受けた権利譲受人(全部承継を受ける弁護士又は共同経営者となる弁護士)が権利譲渡人に補償金を支払った時点で、その推薦に基づき、司法大臣の命令(アレテ)により任命される。補償金の額は、国務院・破毀院付弁護士会及び司法省の監督を受ける。この補償金の支払いについては、融資の便宜も存在する。このような最高裁判所である破毀院付きの専門特化した弁護士会の制度は、EUの各機関から、司法の公役務性を理由に必要なものとして認知されている。
 
国務院・破毀院付弁護士会内部の綱紀は、委員長1名と11名の委員によって構成される綱紀委員会により保持される。委員会の構成員は、いずれも3年の任期で選任され、毎年三分の一の委員が改選される。理事会(Conseil de l’Ordre)は、法院弁護士の職業倫理の策定をその主な任務とし、法院弁護士が個人責任を問われ得る行為について見解を示す。
 
国務院・破毀院付弁護士は、裁判所補助吏でもあり、破毀院の運営に深く関与する。各弁護士事務所は、裁判扶助を受ける訴訟当事者に対し法的な支援を行う。弁護士の中には、裁判扶助事務所において職務を行うものや、刑事事件について破棄を導き得る攻撃防御方法を見出すため上告申立ての内容を検討するものもいる。より一般的に言えば、国務院・破毀院付弁護士の役割は、訴訟当事者の利益を擁護するとともに裁判所をより良く機能させるという相互に関連しかつ不可分な要請に応えることである。
 

上告申立て
 
 民事においては、上告は、国務院・破毀院付弁護士を介して、破毀院の書記課に申し立てる(ただし、公職選挙に関する上告申立ては、訴訟当事者又は特別の訴訟代理権を有する代理人が行うことができる(注1。)。上告期間は、反対の規定がない限り、破棄を求める原判決が送達された日から起算して2か月間である。刑事においては、上告は、判決が宣告された日から5日以内に、原審裁判所の書記課に申し立てなければならない。
 
 上告は、定義上当然のことながら、ある判決の破棄を求めるものであり、一定の手続規定に従うが、ここでは概括的な紹介を目的とするため、その詳細は省略する。上告には、二つの問題が存在する。一つは、上告することができる裁判の種類であり、もう一つは、原裁判の破棄を求めることができる理由である。
 
 民事において上告を申し立てることができるのは、最終審による判決に限られる。その上、一定の留保はあるが、その判決が事件の本案又は少なくとも「本案の一部」について言い渡されたものでなければならず、証拠調べや仮の処分を命じる決定は除外される。これら証拠調べ等を命じる決定については、後に本案についての判決が言い渡された時点で、初めて上告申立てが可能となる。
 
上告人は、破棄判決を得るために、原判決が法令に違反していることを立証しなければならない。これは、事実認定は本案裁判官の専権に属し、破毀院は、事実認定に関与せず、事実認定に関する議論は除外されることを意味する。
 
 刑事においては、「予審部の決定並びに重罪、軽罪及び違警罪に関して事実審の最終審裁判所が宣告した判決は、法令違反がある場合には破棄される」。他方、一定の条件下で破毀院の刑事部長判事に即時上告許可の申立てができるという特別の規則があり、中間判決についてはこの特別の規則に従うこととなる。刑事訴訟法典においては、法令違反以外にも上告申立ての理由となる手続上の瑕疵に当たる様々な事由が規定されており、これらの規定の内容は、欧州人権条約によって今日更に人権保障に厚いものとなっている。
 
 概括すると、民事・刑事の別を問わず、破毀院による統制は、結局のところ、法規範統制(contrôle normatif)と、規律統制(contrôle dit disciplinaire)という二つの大きなカテゴリーに分類される。
 
 法規範統制は、主として、法令違反(民事・刑事)又は法的根拠の欠缺(民事)を理由とする申立てに応答する形式でなされる。法令違反でいう「法令」とは、憲法上の厳密な意味での法律のみならず、規則、慣習法及び、特に憲法第55条の規定により国内法に対する優位性が認められている国際条約等も含まれる。そうした意味では、EU法もここで特に挙げなければならない。一方、法的根拠の欠缺は、必ずしも本案裁判官による法令の誤った解釈適用だけを意味するものではなく、原裁判における裁判官の理由付けが不十分であることも想定される。これらの場合に加えて、さらに、裁判官による文書等の意味解釈の変性、判決理由の欠缺及び当事者の主張に対する応答の欠如も含まれる。破毀院は、とりわけ、この領域において、実体法・手続法の別や新旧を問わず法令の解釈統一(しばしば革新的である。)を図ろうとしている。そして、破毀院判例が形成されるのは、主にこの領域においてである。なお、判例については後述する。
 
 規律統制という表現が長らく用いられているが、この概念は、まず、裁判官による判決の導き方及び判決書の作成方法について裁判官が従うべき義務事項に関するものである。つまり、当事者の申立て及び攻撃防御方法の摘示方法、当事者の主張に対する応答方法並びに判決理由の説示方法に関する義務事項を本案裁判官に遵守させることを担保するものである。判決理由を付す義務には、判決主文を導く理由を述べる義務に加え、理由にくいちがいがないこと、不確実で疑わしい理由を用いないこと、及び提出された攻撃防御方法に対する応答を成さない無意味な理由を用いないことも包含される。民事においては、変性、すなわち文書の明確かつ正確な意味を事実審裁判官の解釈によって変質することも、規律統制の対象に含まれる。次に、裁判官の職業倫理上の責務、より一般的に言えば、公正な裁判の構成要素である諸原則(対審の原則(とりわけ攻撃防御方法が当事者の主張によってではなく、裁判官の職権によって提示されたとき)、公平の原則、裁判の公開の原則、及び合理的な期間内に判決をすること)に裁判官が違反したことを理由とする申立ても、規律統制の領域に属するものであると広く受け入れられている。特に、欧州人権条約第6条第1項の規定により適用される公平の原則は、判例の進化・発展をもたらし、司法機関及び独立行政機関等これに準じる各機関の判断及び手続の在り方に大きな影響を及ぼしている。
 
 このように広く受け入れられている規律統制は、破毀院にとって大きな負担となっている。というのも、膨大な数の上告事件において、この規律統制に関する攻撃防御方法が主張されているからである。しかしながら、一方で破毀院がその判決を統制する裁判所の数、多様性及び非同質性にかんがみるとともに、他方で法治国家における公正な裁判を行う義務の重要性にかんがみれば、この任務をおろそかにすることはできない。
 
 
(注1)2004820日のデクレは、弁護士による代理を義務付けない事件を、刑事事件以外では公職の選挙に関する事件にほぼ限定している。特に、労働事件についての上告は、国務院・破毀院付弁護士による代理が義務付けられることとなった。

上告審の事前手続及び判決
 
 上告申立てが破毀院書記課に登録された後、当該事件について、現在もなお(上告申立てを補うという意味で)「補充趣意書(mémoire ampliatif」と呼ばれる上告趣意書を提出することとなり、これが提出されない場合には、上告申立ては失効する。上告趣意書には、上告申立ての対象となっている原判決の破棄を得るために援用する法的攻撃防御方法を記載するとともに、当該攻撃防御方法を根拠付ける論証を展開しなければならない。被上告人は、答弁書を提出して反論することができる。当事者双方に指定されたこれらの書面を提出すべき期間(事件の性質によってこの提出期間は異なるが、民事では、原則として、上告趣意書は4か月、答弁書は上告趣意書の送達日から起算して2か月)経過後、事件は、報告(主任)裁判官を指名するため、その性質に応じて、破毀院の6か部のうちのいずれかの部、混合部又は大法廷に配点される。
 
 上告申立てが受理の要件を満たさない場合又はその根拠が薄弱である場合には、この段階で「上告却下(non-admission)」と呼ばれる簡易迅速な手続がとられる。2001625日法によって創設された上告却下手続は、少なくとも民事においては、1947年まで存在した上告審における事前審査が別の形で復活したと言うことができる。とはいえ、両者の間には大きな相違点が二つある。第一に、1947年までは「審理部」と呼ばれる事件の事前審査を担当する専門部が存在したが、現在、この種の上告申立てについては、各部がそれぞれ部内の3名(可変)の司法官によって構成される裁判体により決定を行っている。第二に、過去においては、刑事を除き、すべての上告事件は必ず審理部の事前審査を経なければならなかったが、現行制度においては、上告却下の判決が相当と思料される上告事件のみが各部内の裁判体によって取り扱われる。
 
 このような上告事件を選別する手続には、いくつかの利点が認められる。まず、手続の迅速化及び簡略化を図ることができる。上告却下の手続をするには、当然報告裁判官の入念な審査と検察官の意見を聴くことが必要となるが、上告却下の判決に理由を付す必要はない。次に、破毀院は、留意に値しない事件の処理から解放され、その任務の核心、すなわち真の意味で法令上の問題を提起する上告申立てについての破毀院の見解によって構築される判例を作成するという任務に専念することができる。この上告却下手続に付される事件の割合は高く、民事3か部では約30パーセント、刑事部では約35パーセントに上る。
 
 それ以外の事件については、精密な審理をすることが必要であり、部長判事が指名した報告裁判官が書面審査を行う。報告裁判官の役割は、一件記録を調査した後、報告書、意見メモ及び一個又は数個の判決案を作成することである。報告書は、事実及びそれまでにとられた手続の摘示、攻撃防御方法の分析、判断すべき法律問題の表示及びその重要性、有用な判例及び学説の引用、一個又は数個の判決案並びに当該事件を取り扱うに適した裁判体の構成についての提案から構成される。意見メモには、報告裁判官の意見のみが記される。判決案を複数作成するかどうかについては、報告裁判官の判断にかかっており、報告裁判官が複数の結論が考えられる又は議論に付されるべきであると判断するか否かによって決められる。
 
 そして、報告書(意見メモ及び判決案は除く。これらは評議に参加する裁判官のみに供するためのものである。)を含む一件記録は、検察官に送付され、検察官は、意見を述べるためこれを検討する。弁論期日の約1週間前に、部長判事と当該部の最古参の判事が期日を決められた事件について協議する。この「協議」は、報告裁判官及び当該部の中で事件を審理することになる裁判体が特別に留意すべき難題が提起される可能性があるかどうかを事前に検討することを目的とする。
 
 この裁判体は、1997423日法により、上告申立てに対する結論(上告棄却、原判決破棄、上告不受理又は上告却下の別を問わない。)が明らかである場合には、3名の司法官によって構成される。その結論が明らかでない場合には、裁判体は、5名以上の議決権を有する司法官によって構成される。これら二つの裁判体を言い表すのに、前者については「小合議体(formation restreinte)」、後者については「係合議体(formation de section)」という用語がしばしば用いられる。いずれの場合も、検察官が意見を述べた後、事件は評議に付される。評議においては、まず報告裁判官が自ら作成した報告書の要点を再度口頭で説明し、自身の意見を述べる。次いで、最古参の判事を筆頭に年次の古い判事から順に意見を述べ、最後に裁判長が意見を述べる。その後、判決の全般的な趣旨のみならず、その表現や言い回し(結論そのもの以上に重要である。)を含む法廷意見が多数決による投票で決定される。投票結果は判決書に記載されない。個別意見表明の制度はない。
 
 上告棄却の場合には、原判決が確定する。原判決破棄については、全部破棄の場合(原判決が取り消され、その結果、訴訟当事者は、原判決が言い渡される前の状況に立ち戻る。)と一部破棄の場合(原判決の主文の一部のみが取り消される。)がある。破棄の効力は、原則として、上告人と被上告人のみに及ぶが、刑事においては、例外的に、破毀院が上告申立てをしなかった当事者にまで取消しの効果を及ぼす権限を有する。
 
 破棄判決の場合には、大多数の事件は原審と同じ性質の別の裁判所又は同一の裁判所の別の裁判体に差し戻される。事件の差戻しを受けた裁判所は、破棄院大法廷判決による場合を除き、破毀院の判決の内容に従う義務はない。他方、破毀院は、本案について新たに判断する必要がない場合又は本案裁判官が専権的に認定した事実に基づいて、破毀院が適切な法規範を適用できる場合には、事件を差し戻すことなく原判決を破棄することができる。その目的は、手続の迅速化を図り、訴訟当事者に合理的な期限内に判決を受ける権利という公正な裁判から派生する重要な要請の一つを保障することにある。
 

破毀院の判例
 
 破毀院は、司法系統の裁判所の頂点に立ち、唯一無二の存在であり、かつ、それが第一の任務であるという理由から、判例の統一において重要な役割を果たしている。このような破毀院の任務がゆえ、破毀院は、特化しており、事実審ではない。かくして、破毀院は、その法規範が実体法であるか手続法であるかを問わず、また、その新旧を問わず、専らこれを解釈することが求められており、このことが破毀院判決の重要性を更に高めている。破毀院による法令解釈は、破毀院において提出された攻撃防御方法、特に法令違反を理由とする攻撃防禦方法に対する応答として判決書においてなされる。こうして作られた判例は、その理論構成、進化及び射程範囲について様々な批評を受けることとなる。
 
 それぞれの事件について原判決において法令が正しく適用されているかどうかを確認するという破棄の手法の性質上、判例は、上告申立て及び援用された攻撃防御方法に応じて徐々に形成される。「法規的判決」と呼ばれる行為は、「裁判官は、自己に係属する事件について、一般的に適用される規則を制定するような方法で判決をしてはならない。」と規定する民法典第5条により、フランスにおける他のすべての裁判所と同様、破毀院においても禁じられている。それゆえ、判例は、攻撃防御方法によって提起される問題に応じて、徐々に形成されていくこととなる。こうして、破毀院は、フランス社会--かつ現在では欧州社会全体--に耳を傾けながら、これらの社会における政治的、社会的、経済的、国際的、技術的及びテクノロジー上の変化に対応しつつ法を語るのである。破毀院に提起される問題は多様性を極めており、法解釈に当たって突き当たる大半の問題に対して、種々の考慮要素の間でバランスと整合性をとりながら答を提示することが求められている。
 
 こうして確保される柔軟性により、時が経過しても、社会の変化及びその変化の受け止められ方に照らし合わせて、法律に対して与えられる意味を解釈し直すことが可能となる。法令上規定が欠缺している、不明瞭である又は不十分であるとの理由により、裁判官が裁判を拒否することは民法典第4条により禁じられているが、このような柔軟性により、実定法上明記されていない部分を補うことが可能となる。破毀院は、この点において、重要な役割を果たしている。法が明示的に規定していない場合には、破毀院は、主として、次の二つの手法をとる。第一に、立法者が想定していなかった状況に対して法令の規定を適用する手法である。この例として、1804年の民法典を主たる起源とする不法行為責任に関する規定を、自動車事故に関する事件に対して適用する場合が挙げられる。第二に、特に、詐害の意思はすべてのものを腐らせる(詐害の意思でなされたすべての法律行為は、無効の訴えの対象となり得る)との原則(Fraus omnia corrumpit)、不当利得の理論、常軌を逸した近隣妨害の理論又は防御権の原則などの法の一般原則を援用する手法である。この場合には、当然これらの一般原則が実定法の規定に抵触しないことが前提となる。しかしながら、このような手法には限界がある。すなわち、法律の規定自体が、様々な状況の変化が原因で異論の余地が極めて大きくなっているにもかかわらず、その解釈の変更を許容しない場合があるのである。このような場合には、破毀院は、年次報告書に当該規定を今後も維持した場合にどのような帰結を招くかにつき言及し、その改正を提案する。
 
 判例は、小さな修正・変更を経て進化していくものである。大きく方向転換されることもあるが、その性質上、判例が急変することは例外的である。破毀院の司法官は、本案裁判所、当事者及びその弁護士にとって裁判・行為の規準となる安定した判例を形成することに意を用いている。法規範の形成は、継続なくしてあり得ない。破毀院の権威にかんがみれば、なおさらそうである。しかし、過去の破毀院判決が何度も示してきたように、判例は、不動のものではあり得ない。判例のこのような論理必然的な進化により、場合によっては大変革に至ることもあるが、その大半は破毀院内部における熟考の結果であり、時として、学説による批判又は本案裁判所の抵抗などを更に受けた結果でもある。いずれにせよ、判例が変更されるのは、熟考の末のことである。というのも、判例変更の効果は当該判決が言い渡された事件のみならず、連鎖反応により、同じ問題に関係するすべての係属中の事件にまでその影響が及ぶからである。換言すれば、判例変更は、事実上遡及的効力を有しており、判例変更によってそれまでの慣行が糾弾され、その見直しが迫られることになるのである。破毀院は、こうした理由から、社会の変化に対して法を適応させていく必要性と法的安定性の要請の間で難しいバランスをとることを迫られるのである。特に重要な判例変更は大法廷で取り扱われることが多いが、必ずしも大法廷での審理が義務付けられているわけではない。
 
 しかしながら、破毀院の判例は、司法・法律関係者ばかりでなく、企業や個人に広く周知されてこそ、その意義が大きくなるものである。そのため、破毀院の資料・調査課の責任において、関心を有する市民が多様であることに対応して様々な方法により判例を広く知らせることが重視されている。フランス革命の時代から利用されてきた伝統的な方法として、二つの月報が挙げられる。一つは民事、もう一つは刑事に関するものであり、破毀院各部の部長判事がその公表を提案した判例が掲載される。現在では、これらのほかに、季刊の「労働法」及び隔月刊の公報がある。この隔月刊の公報は、すべての裁判所に送付されるものであり、破毀院のみならず下級裁判所が言い渡した最も重要な判決すなわち本案裁判官にとって特別の重要性を持つ判決の要旨、検察官の意見及び報告裁判官の報告が掲載されている。また、この公報には、代表的な学説や控訴院長会同等の破毀院が開催した会議の議事録等も掲載される。
 
 19世紀以降利用されているもう一つの方法として、法律関係の雑誌において学説的な評釈を付した上で判例を紹介するというやり方があり、特に重要な判決については、前述のような検察官の意見や裁判官の報告も掲載される。
 
 他方、コンピュータ及びインターネットの発達により、市民は「レジフランス」というウェブサイト(http://www.legifrance.gouv.fr)上で、オンライン・データベースに無料でアクセスすることが可能となっている。このウェブサイトでは、1960年以降の民事月報及び1963年以降の刑事月報に掲載されたすべての判決とともに、1987年以降のすべての判決(公刊の有無を問わない。)の全文を閲覧することができる。破毀院のサイト(https://www.courdecassation.fr)では、代表的な判決及び検察官の意見を掲載しており、定期刊行物を閲覧することもできる。
 
 破毀院の年次報告書については、格別の位置付けをしなければならない。司法組織法典において、破毀院は、司法大臣に事件の処理状況及び審理期間を毎年報告しなければならない旨規定されている。年次報告書の作成を目的として、報告・調査委員会が組織されており、破毀院長及び検事総長からそれぞれ指名された部長判事、破毀院判事並びに各部及び検事局の代表者とともに、資料・調査課長によって構成される。年次報告書には、とりわけ、法律及び規則の改正の提案、当年に言い渡された特に重要な判決の注釈及び破毀院の構成員が行った法的研究が掲載される。年次報告書は、破毀院のウェブサイトにおいて閲覧可能である。
 

破毀院資料・調査・報告課
 
 資料・調査・報告課は、破毀院長の指揮下に置かれ、破毀院部長判事の肩書きを有する高位の司法官が長を務め、主に司法官(破毀院付司法官)及び非司法官(統括書記及び書記)によって構成される。
 
 資料・調査・報告課は、まず、事件処理の合理化に関与する。この観点から、上告事件を各部に振り分ける段階で、同一の又は類似する問題を提起する事件を関連付けて、破毀院内又は本案裁判所との間に生じ得る判例の相違を最小化するための努力に寄与する。また、破毀院判事及び検事による調査研究において、必要な支援を行う。この課の中に設けられた欧州法観察室は、国内裁判所の裁判官が欧州法を適用する際に生じる問題に対応するための分析手段を提供する。
 
 さらに、資料・調査課は、特に電子的方法によって破毀院判決を他の裁判所に公表・伝達することにより、破毀院の判例政策の発展に貢献する。
 
 
 

破毀院に対する意見照会
 
 1991515日法により、破毀院が意見照会に対して意見を述べる権限を与えられた。この意見照会手続には、新法の解釈について破毀院の立場を迅速に知ることができるとともに、その適用により問題が生じるような法規範について破毀院が採用するであろう立場を十分見通すことができるという利点がある。意見照会手続については厳格に規定されており、いくつかの要件を満たす必要がある。
 
 司法系統の裁判所が、当該裁判所に訴訟が係属している間に論点の提起を受け、当該論点について破毀院に意見を照会する決定をして請求すること。(訴訟当事者が直接破毀院に意見照会することはできない。)
 意見を照会する論点が、法律問題であり、かつこれまでに判断が示されたものでないこと。
 当該論点が、重大な問題を含んでおり、かつ数多くの訴訟においても同様に提起されるものであること。
 破毀院は、法律に規定されたこれらの要件に、もう一つ要件を付加している。すなわち、当該論点が、破毀院に係属している上告申立てに関するものでないこと。その理由は、当該上告事件が係属している部の判断権を侵害しないためである。
 
刑事においては、2001625日法により、事件の性質、及び被告人が未決勾留又は司法監督を受けているときはその判決の宣告を遅延させることがないようにとの配慮から、別の制限が加えられている。
 
破毀院は、破毀院長が原則として主宰する特殊な合議体(その構成は意見照会が民事であるか刑事であるかによって異なる。)で、照会を受けた日から3か月以内に意見を示さなければならない。破毀院に意見照会をした裁判所は、法的にはその意見に従う義務を負わない。
 
このようにして破毀院が示す意見の数は、年間10個程度である。